日本国憲法と自民党改憲案を確認する12 第11章 最高法規

今さらですが、天皇には名字がありません。

最高法規という章は、実は私たちが見落としがちな重要な内容な記されています。その確認をしていきましょう。特に国際法との関係は、非常に大切です。

シリーズ作成に当たって(共通なので1回読んだらスルーして!)

自民党の憲法改正案が出されたのが平成24年。すでに6年前になりました。あれからいろいろな議論があったようですが、正直言うと一般市民のほとんど(含む私)は改正案をしっかり読んでいないでしょうし、そもそも憲法だってちゃんと読んだことなどありません。その後、公明党への配慮などもあり、かなりトーンダウンした「改憲4項目」が平成30年の自民党大会に出されました。
 ここでは、現行憲法と「改憲4項目」の前に出された平成24年版自民党の改正案を比較しながら、自民党の目指す未来を理解し、何が素晴らしいのか、何がヤバイのかを見ていこうと思います。
 ちなみに、私は「政権交代がないと政府が腐るのは否めない。」という理由で反自民ですが、自民党の政策そのもに全て反対しているものでもなく、このシリーズもできるだけ公平に見ていきたいと思います。

現行憲法を確認しましょう

97条 基本的人権の由来特質

第十章 最高法規
〔基本的人権の由来特質〕
第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

日本国憲法

基本的人権は、将来に渡って侵すことのできない永久の権利と謳っています。ここだけ特別枠のようです。

でも最近、「人権などと言ってるうちはだめなんだ。」とか、「国を守るために血を流す覚悟」とか、物騒な言論も出てきています。今後おかしな方向に進まないように、これは守っていくべきでしょうね。

と思ったら、削除されちゃったよ。

おいおーい。これは誰の差し金ですか?無くす必要ってどうなんですか?

98条 憲法の再構成と条約及び国際法規の遵守

〔憲法の最高性と条約及び国際法規の遵守〕
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

日本国憲法

ここには、2つの重要な内容が書いてあります。

憲法違反の国内法は無効である

自衛隊が違憲かどうかということは、98条にも関係することなのですね。

条約・国際法は守る

憲法はあくまでも国内の最高法規です。憲法の効力の及ばない外国と締結した条約や国連などの国際法、TPPあたりも含めてきちんと守りましょうと言ってます。つまり、日米安保の問題も内容が憲法の趣旨に合うかどうかという問題はありますが、締結した以上これを守る必要があると読み取れます。もちろんその条約が憲法に合わないものなら、それを変えていく努力も必要です。

最近、隣の国で「2国間で締結したものでも、司法判断に対して何もできない」と開き直ったことで、関係がこじれてしまいました。日本の感覚なら「国同士で締結したものは、一方的に反故にできない」となるのですが、その根拠が98条なのですね。隣の国では憲法と条約の上位性はどちらが上なのでしょうか。気になるところです。

自民党改憲案では、98条の変更なしです。

99条 憲法尊重擁護の義務

〔憲法尊重擁護の義務〕
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

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日本国憲法

特に異論はないでしょう。憲法を尊重する義務を負うわけですから、憲法に反するような言動は控えるべきでしょう。「戦争しないと取り返せない。」「基本的人権があるからだめなんだ」などの発言は、議員のみならず公務員は辞職もんです。

自民党案で追加されたものがあります。
「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

今回の改正案では、いたるところに「国民の義務」が書き加えられています。ここにも「憲法尊重の義務」が追加されました。

これは、言論の自由の侵害にはならないでしょうね。まあそんなことはないと思いますが・・・
もし、憲法を尊重しない言動が許されないとしたら、それはそれで恐ろしいことです。社会主義をめざす左翼の人も、主権を天皇に戻したい右翼の人も、自分の主張をSNSに公開すると逮捕されたりして・・・

正直いうと、あまり国民の義務を強調するのもどうかと思いますが。

まとめ 改正案を振り返って

12回に渡り、日本国憲法と自民党憲法改正草案(平成24年4月27日)を見比べてきました。その内容は「そうだよな。」と賛同できる部分と「それはないでしょ。」と阻止したい部分と、「まあ、どうでもいいよ。」という字句の訂正に近い部分が混在しています。一概に「与党支持だから賛成」とか「自民党は信頼できないから絶対反対」ではなく、ひとつひとつの改正案をじっくり確認していきたいものです。

できれば、自民党以外の野党の改正案があるのなら、それも提示してもらいたいとも思います。「一字一句変えるべきでない」という主張なら改正案は出ないのでしょうが。

いずれにしても、国会できちんと議論してほしいと思います。大切な内容だから、国政選挙前には国民投票できるように準備して、ひとつずつ賛否を問うのはどうかなと思います。一気にたくさん出されても、簡単にまとめて◯か✖️かなんて乱暴すぎます。

みなさんも、ぜひ憲法について考えてみてください。このシリーズが多少の参考になれば幸いです。

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