日本国憲法と自民党改憲案を確認する6 第5章 内閣

野党だった時に総裁として頑張ったのに、与党返り咲きが見えたあたりで安倍さんに横取りされた感のある谷垣さん。基本私は反自民ですが、この人に総理させたかったなあ。

内閣は実質的に日本を動かす中心です。その役割の根幹を憲法は明記しています。自民党改正案では大きな変更はありませんが、良い機会ですから現行の憲法をしっかりと読み込んでみましょう。

シリーズ作成に当たって(共通なので一回読んだらスルーして!)

自民党の憲法改正案が出されたのが平成24年。すでに6年前になりました。あれからいろいろな議論があったようですが、正直言うと一般市民のほとんど(含む私)は改正案をしっかり読んでいないでしょうし、そもそも憲法だってちゃんと読んだことなどありません。その後、公明党への配慮などもあり、かなりトーンダウンした「改憲4項目」が平成30年の自民党大会に出されました。
 ここでは、現行憲法と「改憲4項目」の前に出された平成24年版自民党の改正案を比較しながら、自民党の目指す未来を理解し、何が素晴らしいのか、何がヤバイのかを見ていこうと思います。
 ちなみに、私は「政権交代がないと政府が腐るのは否めない。」という理由で反自民ですが、自民党の政策そのもに全て反対しているものでもなく、このシリーズもできるだけ公平に見ていきたいと思います。

現行憲法はこうなってます

第五章 内閣
〔行政権の帰属〕
第六十五条 行政権は、内閣に属する。
〔内閣の組織と責任〕
第六十六条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
〔内閣総理大臣の指名〕
第六十七条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
〔国務大臣の任免〕
第六十八条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
〔不信任決議と解散又は総辞職〕
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職〕
第七十条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
〔総辞職後の職務続行〕
第七十一条 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
〔内閣総理大臣の職務権限〕
第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
〔内閣の職務権限〕
第七十三条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
二 外交関係を処理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 予算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
〔法律及び政令への署名と連署〕
第七十四条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
〔国務大臣訴追の制約〕
第七十五条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

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日本国憲法

自民党改憲案の変更点は

新設 70条の2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。

「欠けたとき」という表現が物悲しさを漂わせますね。とにかく総理に何かあったときに職務代行を決めておくのは、悪いことではありません。

72条 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う。

特に新しいものは入ってませんが、「並びに行政各部を指揮監督する。」と、最後にちょんと付いていた部分を最初に持ってきました。順番がトップというのは、ここを最重要視するという決意(魂胆?)の表れと言えましょう。

72条の3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。

2章の「安全保障」に盛り込んだ「国防軍」と整合性を持たせるために、内閣の機能の中にも国防軍が入ってきました。
「国防軍」という文字には、少々ギョッとする気持ちがありますが、内閣のところで議論する必要はないでしょう。

まとめ ほんのちょっぴり権限強化?

内閣の機能はほとんど変わっていません。内容は変わらないものの、ほんの少し順番を変えて(72条)内閣総理大臣の権限を強化したと・・・いや、考えすぎでしょう。総理大臣が行政全般を統括するのは当然のことですから。

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