日本国憲法と自民党改憲案を確認する4 第3章 国民の権利と義務

みんな主権者

第3章は大きな変更はありません。ありませんが、じわじわとひとつの方向に進んでいくかもしれない懸念も残ります。権利と義務の章に新たに出現した「公益及び公の秩序」をどう評価するかが判断の分かれ道でしょう。

このシリーズ作成にあたって(共通なので一回読んだらスルーして!)

自民党の憲法改正案が出されたのが平成24年。すでに6年前になりました。あれからいろいろな議論があったようですが、正直言うと一般市民のほとんど(含む私)は改正案をしっかり読んでいないでしょうし、そもそも憲法だってちゃんと読んだことなどありません。その後、公明党への配慮などもあり、かなりトーンダウンした「改憲4項目」が平成30年の自民党大会に出されました。
 ここでは、現行憲法と「改憲4項目」の前に出された平成24年版自民党の改正案を比較しながら、自民党の目指す未来を理解し、何が素晴らしいのか、何がヤバイのかを見ていこうと思います。
 ちなみに、私は「政権交代がないと政府が腐るのは否めない。」という理由で反自民ですが、自民党の政策そのもに全て反対しているものでもなく、このシリーズもできるだけ公平に見ていきたいと思います。

現行憲法での国民の権利と義務は

第三章 国民の権利及び義務
〔国民たる要件〕
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〔基本的人権〕
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
〔平等原則、貴族制度の否認及び栄典の限界〕
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
〔公務員の選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障及び投票秘密の保障〕
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
〔請願権〕
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
〔公務員の不法行為による損害の賠償〕
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
〔奴隷的拘束及び苦役の禁止〕
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
〔思想及び良心の自由〕
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
〔信教の自由〕
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
〔集会、結社及び表現の自由と通信秘密の保護〕
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
〔学問の自由〕
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
〔家族関係における個人の尊厳と両性の平等〕
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
〔生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務〕
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
〔財産権〕
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
〔納税の義務〕
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
〔生命及び自由の保障と科刑の制約〕
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
〔裁判を受ける権利〕
第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
〔逮捕の制約〕
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
〔抑留及び拘禁の制約〕
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
〔侵入、捜索及び押収の制約〕
第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。
2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
〔刑事被告人の権利〕
第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
〔遡及処罰、二重処罰等の禁止〕
第三十九条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
〔刑事補償〕
第四十条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

日本国憲法

自民党の改憲案(抜粋)

文言の変更はいろいろありますが、内容が変わった部分だけ挙げてみます。

12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

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「公共の福祉」という限定事項が「公益及び公の秩序」に変わっています。公共の福祉と公益の違いは何でしょうか。深読みすると恐ろしくなりますが、ここは文字通りに解釈して大きな変更なしとします。
 ちなみに、同じ変更が13条にも見られます。「公共の福祉に反しない限り」が、「公益及び公の秩序に反しない限り」に変化しています。
 うーむ、「福祉」から「秩序」ねえ・・・深読みしたくはなるところ。

14条 平等の要件に「障害に有無」を挿入

 これは、良いのではないでしょうか。賛成。

15条の3 公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による。

今までは単に「成年者」となっていましたが、「日本国籍を有する成年者」になりました。移民や外国人労働者などの権利はどうなるのだろうとも思いますが、これで問題ないかと思います。例えば遠い将来中国からの出稼ぎ労働者が半数を占め、国会で与党になり、中国に併合される案件が可決なんてことだって可能性がゼロではありませんから。(それのどこが悪い、という意見もあるのかな?」

新設 (個人情報の不当取得の禁止等)
19条の2 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。

 現代の問題に即した条文が新設されました。「不当に取得」という文言がどこまで現在の商活動を制限するのか、ちょっと見ものではあります。憲法が改正されなくても、この部分は法律としてしっかり成立してほしいですね。

20条 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。

宗教法人の一部税の免除がありますが、あれは「国が与えた特権」ではないのでしょうか。個人的には宗教法人もきちんと全ての税を支払うべきと考えていますが、何とかならないでしょうか。公明党のみなさん!!!

20条の3 国及び地方公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼または習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。

前にもあった項目ですが、「習俗的はものは、あまり固く考えないで」と容認しています。例えば神棚やお守り、お札などでしょうか。これくらいは認めても特定宗教とは言えないので問題ないでしょう。

21条の2 (前項で表現の自由を保障しつつ)前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない。

 「公益と公の秩序」が3回目!

21条の二 国は、国政上の行為につき国民に説明する義務を負う。

 やや違和感あり。だって、国民が主権者なので「国=国民」ですよ。当然すぎるというよりも、「私は私のことを全部知る」というのと同じくらいナンセンス。この条文が必要だとするなら、国というやつと国民は一致しないと、上の方々がバラしちゃってます。

新設 24条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、高いに助け合わなければならない。

 これを「憲法」に組み込むって何でしょうか。これって表現の自由と抵触しないのかな。例えが極端ですが、「日本の基幹産業である農業の主たる生産物である米は日本の伝統として尊重され、食さなければならない。」に近いものを感じてしまいます。
 改正案の前文にも家族の記述がありました。自民党は昔ながらの家族の姿を理想としているのでしょう。それはそれでいいのですが、憲法に入れるってとうよ。

25条の2 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。

 環境保全について異論はありません。「国民と協力して」が少々ひっかりますが。

25条の3 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。

 ここも、敢えて問題なしとしておきます。海外派兵の理由にされるという問題も残りますが、それは9条を変えなければ良いだけのこと。ただ、この理念が憲法でなく法律にあっても問題はありません。

25条の4 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。

 大切な視点ですが、「加害者の家族・親族」への配慮も必要な時代かも。

26条の3 国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。

 まあ、良いでしょう。

28条の2 (勤労者の団結権の保障に続いて) 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。

 これが新設されたことで、たとえば教職員組合などはかなりの制限を加えられることになるでしょう。自民党にとっては素晴らしい改憲案です。
 問題点のひとつとして、今も公務員はストなどの権利がなく、その代わりに「人事院勧告」というものがあるわけです。しかし、人事院が賃上げを指定しても、実質的に予算がないから従えないという事例も発生し、公務員の勤務条件はかなり大変です。それでも民間より恵まれている点が多いのも事実ですが。

29条の2 (財産権保障に続いて) 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。

 一見すると、何を言いたいのかわかりません。
「公益及び公の秩序に適合する財産権:とは何なのでしょうか。
(これで『公益及び公の秩序』は4回目です。)
「知的創造力の向上に資する配慮」とは何でしょう。「きちんと知的財産権を保障しないと、すぐにマネされて新しいものを作る意欲がなくなるから、そこはしっかり最初に作った人を守ろう。」という解釈でいいとは思うのですが、それにしても文章がわかりにくい。

まとめ やや細かくなり「公益及び公の秩序」が散見される

「公の秩序に反する」という判定で、国民の権利も制限されるということなので、「治安維持法」にむけて半歩前進というところでしょうか。うすら寒いものを感じてしまいますが、確かに「秩序」というものも大切ではあります。ここをどう判断するか、考えどころです。

「家族」が出てきたのには笑いました。いかにも自民党ですね。夫婦別性に反対しているのも自民党ですから、昔ながらの家族像を大切にしたいということなのでしょう。

 ところで、憲法改正の国民投票って、全部について一括で良し悪しの判断でしょうか。「ここは賛成だけど、ここはダメ。」という人はどうすればいいのでしょうか。

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