この映画、純粋に映画としての出来栄えや面白さという観点では、超名作と言えるかどうかはよくわかりません。
内容は、マルコムXの生涯をほぼ事実に基づいて描いたもの。その生涯自体が短かったこともあり、歴史上は同じ時代の黒人活動家である「キング牧師」に比べると、やや陰に隠れた感もあります。
実際、「マルコムX」という名前は聞いたことがあっても、何をした人なのかわからない人も多いのではないでしょうか。(実際、私もそうでした。)
マルコムXって誰?
1925年アメリカ生まれ。1965年に39歳で暗殺されています。
小さい頃に父親を白人の手で惨殺され、白人の家庭に引き取られたりもしています。勉強はすごくできたようで、弁護士や医者などを目指そうとしますが、先生から「黒人はあまり大きな夢を見ないほうがいい。」と諭され断念。
その後、強盗や麻薬などの犯罪に手を染め、20歳で刑務所へ。
刑務所の中の出会いから、イスラム教に改宗し、刑務所内で猛勉強をして膨大な知識を身につけた話は有名です。なんでも辞書を全部書き写したとか・・。
6年で出所したマルコムXは、黒人解放の活動家として認知されるようになりますが、「非暴力」を謳ったキング牧師とは一線を画し、攻撃的な論調で世間を驚かせていました。(実際に暴力や破壊活動は行っていないようですが。)
残念なことに39歳の時に暗殺されてしまいます。もし生き延びて活動を続けていたら、その後のアメリカも少しは平等への動きが早まったかもしれませんね。
映画はどんな感じ?
第二次大戦が終わったばかりの時期、黒人への差別や迫害が当たり前だった時代です。映画の中では黒人が迫害され、惨殺される場面も多く出てきます。
そんな悲惨な時代の暗さと、戦争にも勝ってどんどん発展していくアメリカの明るさが織り混ざって、若干退廃的な雰囲気も醸しながら、時代をうまく表現しているなあと感じます。
映画を見ながら、「この時代のアメリカに生まれなくて良かった。」とつくずく思いました。白人に生まれたとしても・・。
※ ストーリーは、ほぼ史実の通りなので、この記事の前半を見てください。
監督、スパイク・リー
黒人の監督としては、もっとも成功した人のひとりではないだろうか。
映画監督としての才能も申し分ないが、人種問題でも数々の発言が注目を浴びている存在である。
主演、デンゼル・ワシントン
もうハリウッドに無くてはならない人物と言えましょう。
黒人解放に関する映画では「遠い夜明け」のスティーブ・ビコの役も良かったです。どんな映画に出ても、なんとなく知的な雰囲気を醸してますね。
なんと、原作はアレックス・ヘイリーでした!
あの有名な「ルーツ」の作者です。
「ルーツ」、良かったなあ・・・。
わけもなく「クンタ・キンテ」が流行りました。
まとめ
人種や肌の色の問題は、公には解決したことになっていますが、未だ全てが平等の時代は訪れず、特にアメリカ国内では人種差別を思わせる事件が無くなりません。
思えば、私が子供の頃は「日本人は白人の仲間として認められているから、白人の場所に入っても大丈夫なんだって。」なんていう話が実しやかに語られていました。(たしか、南アフリカの話だったかな。実態は見てませんからわかりませんけど。)
その頃から比べれば、ずいぶんと改善されたようにも思えますが、本当の意味での完全解決は、これからです。
より良い時代に一歩進めるために、この映画を見て昔(といっても、ほんの50年前)を再確認するのも悪くありません。というより、必要なことでしょう。