家に帰ろう 隠れた名作映画11

ロードムービーが大好きです。繰り返し続く日常から別の世界に飛び込む、あの感覚が好きです。旅(あるいは逃避行)にはトラブルが付きもので、そこが映画の題材にもなりやすく、数々の名作が生まれたジャンルでもあります。

主演 ミゲル・アンヘル・ソラ

今回紹介するのは「家に帰ろう」。2017年アルゼンチン映画です。

ブエノスアイレスに住む88歳の仕立屋アブラハムは、自分を施設に入れようとしている家族から逃れ、スペイン・フランスを経てポーランドへと向かうための旅に出る。 公式HPより

主人公のアブラハムはユダヤ人。第2次大戦で起きた「人類史上最悪の虐殺」と言われるナチスのユダヤ人狩りに遭い、家族を目の前で殺されたアブラハムは、かつて使用人だった一家の息子に救われます。何とかアルゼンチンに逃げ延びたアブラハムは、88歳になり、命を救ってくれた友人に会うため、一人アルゼンチンを発ち、マドリード、パリを経てワルシャワにたどり着くまでの物語。

アブラハムの家を売り払い彼を施設に入れようとする子供達との確執や、旅の途中で出会う人々とのほんの一瞬のふれ合い、アブラハムの回想や言葉の壮絶さなど、単純なストーリーの中にいろいろな思いが交錯します。最後の場面では、不覚にも泣いてしまいました。

忘れてはならない戦争の大きな傷跡を後世に残すという意味でも、見るべき作品です。

当時、ドイツ軍が侵攻していたポーランドで、ユダヤ人の生き残りは10パーセント程度だったといいます。これは、驚くべき数字です。確かに戦争のある場面を切り取れば、一方の軍が全滅するという事もあったでしょう。でも、これは戦う意志を示さない捕虜の、しかも特定の人種にのみ加えられた蛮行なのです。

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現在のドイツは、過去の過ちを認め、ヨーロッパ全体の幸福に貢献すべくEUをリードし、ドイツ一国だけが発展しようという野望を封印しているように見えます。また、ドイツ各地の強制収容所を保存し、負の遺産として広く内外に公開しています。入場料はどこも無料です。かつて私も何ヶ所かの収容所を見学しましたが、どこもきちんと整備され、そこで何があったのかわかり易く説明してくれるスタッフがいたり、たくさんの資料も用意されています。

同じ第2次大戦で敗戦国となった日本は、別の観点から「戦争を二度としない」と誓った国です。ただ、過去の負の遺産をどのように扱っているかという点では評価の分かれるところ。中国や東南アジアへの侵攻がどうだったか。また、当時日本の領土となっており、日本と共に戦う以外の選択肢がなかった朝鮮はどうだったのか。このあたりの議論が、特に韓国とは未だに平行線ですね。原爆や大空襲など、どちらかというと「大きな被害に遭った」という側面がクローズアップしていることは事実ですが。

戦争が終わったのが1945年なので、戦後75年ということですね。時には「75年前に何があったのか」という苦しい事実を、映画という取りつきやすい媒体で確認するのも良いことです。

と、いろんな意味でオススメです。

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